桜島(鹿児島県)

2024年3月14日


昨日の開聞岳登山では疲労困憊・満身創痍。一晩寝たくらいで快復するはずもないけれど、鹿児島まで来て一日を無駄にしたくなく、予定どおり桜島の散策に出掛ける。もっとも頻繁な噴火があるだけに標高1117mの御岳などは立入禁止。沿岸部を軽く散策したい。



鹿児島港からフェリーで僅か15分で桜島に到着。まずはビジターズセンターで桜島の基礎知識を学び、隣接するなぎさ溶岩公園へ。ここから約3㎞の溶岩観察遊歩道があるらしい。足はまだ痛いけれど、平坦な遊歩道なら問題なかろう。



海岸に沿った道は、溶岩だらけ。粘度が高い溶岩が海水で急激に冷却されたのだろうか、奇妙な形をしたゴツゴツした岩があちらこちらに見られる。



まさに溶岩海岸。ゴツゴツとした岩が海岸を形成している。海(錦江湾)の向こうは鹿児島市街。僅か2~3㎞しか離れていない。錦江湾は人気の釣りスポットのようで、多くの釣り船が浮かんでいるのが見える。時折大物を釣り上げたのか、歓声が聞こえる。



このあたりの溶岩は大正時代の大噴火によるものだという。噴煙は3000m以上、岩石は1000mもの高さまで噴き上げられたという。ここの岩も、ここで固まったものではなく、噴き上げられたものが、ここまで飛ばされてきたのかもしれない。



自信は無いけれど、たぶん安山岩だと思う。開聞岳も安山岩らしき岩が多く見られたけれど意外に滑りやすい岩だった。安山岩にも色々とあるようだ。



溶岩で覆いつくされ、火山灰が何度も降り注いだはずなのに、松などが力強く育っている。かつてこの辺りの植生を全滅させた溶岩なのに、今では逆に緑が覆い被さっている。長い歴史の中で何度もこのような主役交代が行われてきたのだろう。



海岸から噴火口がある山頂付近までは5㎞くらいはあるように見える。これくらい離れていたなら噴火があっても大丈夫そうに思えるんだけれど、実際には全然大丈夫じゃぁない。火山の威力は底知れない。



遊歩道には、この地を訪れた俳人の句碑がいくつもある。水原秋桜子が訪れた際には大噴火があったようで、「さくら島とどろき噴けり旧端午」の句を残している。



溶岩なぎさ遊歩道の終点から一般道で折り返し。田舎道だと思いきや、桜島の山容と桜島大根をモチーフにしたユニークな街灯が並ぶ、立派な国道が走っている。そりゃまあ桜島は鹿児島市の一部だし、かつては2万人以上、今でも4000人ほどが住んでいるところだ。



さすがに鹿児島には早くも春が到来しているように思える。これは桜? あるいは梅の仲間にも感じられる。こんな基本的とも思える花の名前がまるで覚えられない。



これは間違いなく桜だろう。いや、たぶん、おそらく…。



これはタンポポだよね~。かなり確信度は高い。



あちらこちらに、バス停の待合所のような建物が見られるけれど、これは噴火が起こった際の避難壕なのだ。とんでもない大きさの岩石が上空から続々と落下してくることを想像するだけでも怖ろしい。



溶岩なぎさ遊歩道の散策を終えてビジターズセンターに戻ってきた。今年の噴火回数は既に21回。爆発回数は10回。噴煙が1000m以上あがれば噴火、さらに噴石の飛散あれば爆発にカウントされるらしい。凄い発生頻度だ。



溶岩なぎさ公園にある長さ100mという足湯で、しばらくまったり。暑くもなく、寒くもなく、とても良い気候。山と海を眺めながら、いつまでも浸かっていられそうだ。



桜島の端っこのわずか4㎞ほどを1時間ほどかけて歩いた。昨日の疲労もあって、歩くことがとても億劫に思っていたけれど、歩き始めると見たことも無い光景の連続で、すっかり痛みも疲れも忘れてしまっていた。



道の駅で昼食。ざるそばと桜島大根のかき揚げを戴く。とても美味しそうに見えたので、通常のかき揚げざる蕎麦に、さらにかき揚げを1個追加。期待通りサクサクで甘味があって美味しい。お勧めの桜島特産の小みかん天塩を振りかけると、さらに旨い。



道の駅には桜島大根が植えられている。たぶん収穫すべき時期は過ぎているのだろうけれど、観光客向けにそのままにされているのだろう。桜島大根も大きいけれど、縦横無尽に茎を伸ばした茎の先に咲き乱れる薄紫の花がすごい。



車で桜島の海岸に沿って一周。島の南側にある有村溶岩展望所にやってきた。溶岩がゴロゴロと積み重なる中に一周30分ほどの遊歩道が整備されている。いつの間にか噴煙がかなり高くまで上がっているけど、噴火と判定される1000mには少し届いていないように思う。



折り重なるように溶岩が積み上げられている。岩の隙間にはかなりべチャっとした泥状の黒土が多い。泥も岩も噴火口から飛ばされてきたもののようだ。



遊歩道は火山灰だらけ。随所にホウキなどの清掃用具が見られ、しばしば掃除されているのだろうけれど、頻繁な降灰でこのような状態になるのだろう。



避難壕になっていると思われるトンネルの上にも、たくさんの岩が見られる。遠くで煙を噴き上げている噴火口からこのような岩が飛ばされてきたのだろう。火山の凄まじい威力を感じずにはいられない。



海の向こうは大隅半島。大正の大噴火により大隅半島と桜島は陸続きになったという。今では溶岩で出来上がった桜島と大隅半島を繋ぐ陸地には緑も生い茂り、国道までが敷設されている。



島の東側にある黒神埋没鳥居。なんと鳥居が火山灰により3mも埋まっているという。凄い量の岩石が桜島の山々から吹き上げられたことを見てきたけれど、それをさらに上回る半端ない量の火山灰が降り注がれているようだ。



一日かけて桜島をのんびり散策。なんとか明日は霧島の韓国岳に登りたいものだけれど、足腰は快復するだろうか。


開聞岳(鹿児島県)

 2024年3月13日


薩摩富士とも呼ばれる秀麗な山容を誇る開聞岳に挑戦だ。ホントは長崎鼻から見える東シナ海に浮かぶような開聞岳も見たかったのだけれど、時間が無く立ち寄れず。指宿観光協会の写真を借用させていただく。



朝一番の飛行機で鹿児島に飛び、慣れないレンタカーで道間違いを連発しながら登山口に到着。写真で見ていたのとは異なり、目の前に聳える開聞岳は貫録たっぷり。早々に威圧される。



標高924mの山頂までの道はらせん状の一本道。ひたすら登りが続くはずだ。睡眠不足のうえに、長距離のフライト&ドライブで背中が痛い。しかも登山開始は11時半。色んな面でギリギリの状態で登山開始だ。



さすがに南国。3月とは思えない植生だ。火山からの堆積土を抉ったような道は自然にできあがったものなんだろうか。わざわざ掘削したものにも感じられる。何もかもが目新しい。



3合目。頂上まで合目表示が設置されているのは有難い。とにかく草木が生い茂っていることもあり、視界が完全に塞がれていて、景色はまるで変わらない。大海に沿って山を登っているという感覚はまるでない。



晴天だけれど幸い気温はさほど高くなく、樹木に遮られているせいか風も感じない。おそらく最高レベルのコンディションのはずだ。勾配は思ったほどに大したことはない。路面も荒れてはいるけれど、何とかなりそうだ。(と思っていた)



5合目。背中は痛いけれど、ここまでは元気に登ってきた。5合目なんだからここが中間点、と思ったけれど、これがとんでもない間違いであることに、後に気付かされることになる。



5合目展望台。登山開始以来、ここで一瞬眺望が開ける。長崎鼻が良く見える。ここまでずっと南に向かって登ってきたけれど、この後は山頂に向けてらせん状の道が続くはずで、道の方向は西、北、東へと巡っていくはず。楽しみだ。



が、5合目を過ぎると道はさらに歩きにくいものになってくる。まず路面に多数の石がゴロゴロとしている。ほぼ全てが浮石だから、登るのはともかく、下りは特に注意しなければ簡単に転倒してしまいそうだ。



さらに登っていくと、石の大きさがどんどん大きくなってきて、岩と呼ぶのが相応しいサイズになってくる。火山から吹き上げられた岩が坂を落ちていくにつれて割れたり削れたりしていくのだろう。



路面に気を取られていると、道に突き出した枝に頭を強く打ち付けてしまった。あわや脳震盪だ。さらに岩を登る際に滑って左ひざを打ち付けてしまう。背中は痛いし、頭は打つし、膝は怪我するし、満身創痍状態だ。でも開門岳に登りたいという気持ちだけは萎えない。



ごくたまに下界が広がるところがあるけれど、大半はあまり変化の無い閉ざされた道を歩くだけ。開聞岳の山容を思い描きながら、その山肌を登っていることを想像することでモチベーションを高めていくしかない。



7合目を過ぎると、勾配はさらにキツクなってきたように感じる。疲れているせいかもしれない。アチコチが痛いけれど、さらに古傷の股関節が痛みだした。下手に休憩を取るとますます歩けなくなりそうなので、ゆっくりと、開口部や洞窟がある危なっかしい道を進む。



8合目。下山してくる方から「今からですか?」と声を掛けられる。かなり危なっかしい歩き方に見えるのかもしれない。5合目付近で風のようなスピードで登っていくハイカーに追い抜かれた後、誰も後ろから来ない。ひょっとしてこの日のアンカー?になっているようだ。



8合目から9合目まで、随分と時間が掛かった。もう少しスピードアップしなければとも思うけれど、下山の足をしっかりと残しておかねばならない。久々に見える眺望は東側(頴娃、枕崎方面)の海岸になっている。



有名な梯子が出てきた。ただでも足がふらついているような状態だけに注意深く登る。でもこれって下る時の方がヤバイよなぁ…とまだ登頂もしていないのに下山の心配ばかりしてしまう。



鎖にしがみつきながら岩の斜面を進む。もういい加減山頂に着いてくれ~、との思いが益々強まってくる。右股関節もさらに痛くなってきた。



山頂まで52m。なんと半端な標識だ。でもここから山頂までの道は決して半端ではないに違いない。もうすぐと思いながら、もう何十分も歩き続けているような気がする。



たぶんこれが最後と信じて、大きな岩を攀じ登っていく。登った先がゴールではなく、折り返し地点でしかないことは判ってはいるんだけれど、とにかく痛む股関節を叱咤して登り続けるしかない。



ついに山頂。岩だらけだ。幸い風もなく、晴天であることを改めて有難いと思う。なんと予定の2時間半を大幅に超えて3時間以上もかかったぞ。休憩してしまうと益々股関節が痛くなるのでここまで座りこむことなくやってきたけれど、さすがに休憩なしではもう歩けない。



山頂には先行ハイカーが一人だけ。でもその一人もしばらくすると下山してしまい、山頂は独り占めだ。山頂から眺望はさすがに凄い。正面の湖は、かつてイッシーと呼ばれる怪獣が棲んでいると言われた池田湖だ。屋久島や種子島は残念ながら確認できなかった。



20〜30分ほど休憩し、股関節をほぐして、下山開始。とにかく注意の上にも注意だ。自分の後ろにハイカーがいないし、今から登ってくる人もいないだろう。ここでトラブルを起こせば誰にも気づかれないのだ。日没までに間に合えばいい、ゆっくりでも確実に下っていく。



岩は少しずつ小さくなり石ころになる。この石ころが要注意で石車とまで呼ばれるのだ。誤れば簡単に転倒や滑落に繋がる。しかも石は黒、赤、白の三種あって、それぞれ、滑りやすさとか、柔らかさが違う。これほどストックを多用・重宝することはかつて無かった。



最後の最後に一人を追い抜いたとはいうものの、超ヘトヘト状態で開聞岳を下山。よくまあ大きなトラブル無しで下山できたものだ。登る時はたくさん駐車されていた車も随分と少ない。開聞岳に別れを告げてレンタカーで帰路につく。たぶんもう二度と登らない…。



しかし最大のトラブルは下山後に訪れた。レンタカーを運転していると足が痙攣したようになり、路肩に退避。芍薬甘草湯もいつものようには効かず、長々と車の中で足をマッサージしながら待機する羽目に陥った。歩行距離7.7㎞、獲得標高843m、所要時間6時間19分。