加西市閑歩(JR加古川線スタンプラリー)

2016年2月14日(日)


昨日来の雨は朝のうちに上がったが、大気の不安定さは続いているようで、なんとも生暖かい休日、JR加古川線がICOCAをやっと導入した、ということを記念して、「JR加古川線等スタンプラリー」なるものが開催されている。加古川線「等」には、神戸電鉄粟生線と北条鉄道も含まれているので、以前から訪問したかった五百羅漢の見学を兼ねて出掛けることとする。



JR加古川駅で加古川線に乗り換えようとすると、「ICカードはご利用いただけません」の大きな看板。何のことはない、ICOCAが導入されるのは3月からとのことだ。



加古川駅で飛び乗った電車は、厄神行。わずか3駅しか進んでないぞ。目指す北条町に行くためには、さらに3駅進んで粟生、さらに北条鉄道に乗り換えて7駅だ。止む無く厄神駅で、次の電車を待とうとすると、な、な、なんと50分待ち!!




「あまり面白いところではないけど、次の電車まで外でブラブラしてください」と仰る駅員さんの好意に甘えて、加古川の土手をブラブラ歩く。海岸から10km以上はあるはずだが、加古川の川幅は広い。古くから西国裏街道の渡し場として栄えたという国包渡し跡がある。



さらに進むと、加古川の土手に整備されているフルマラソンコースの折り返し点があった。



厄神での30分余りのブラブラ歩きを終え、あらためて厄神駅から西脇行の1両編成の電車に乗り込む。加古川を渡る鉄橋は、狭い単線のせいもあってか、とても長いものに感じられる。



粟生駅で北条鉄道に乗り換え。かつてはJRだったものが、今は加西市などが株主となった第三セクター方式の鉄道となっている。経営は大変そうだが、あの手この手で集客に努めているようだ。



思いのほか乗客は多い。その半数近くは、途中の法華口駅で下車してしまった。法華口駅には、カメラを抱えた人が大勢集まっていて、駅員風の女性をバチバチ撮影していた。電車内でスマホで調べると、どうやら最近人気のボランティア駅長さんのようで、北条鉄道のマドンナと呼ばれているらしい。終着駅の北条町はさすがに大きな駅だが、ここでも駅長はボランティアのようだ。



駅舎のなかは、賑やかな観光案内所となっている。観光マップの配布から地元の名産品の販売はもちろんだが、この鉄道を取材にやってきたテレビタレントのサインが壁に沢山貼られている。



北条町駅は、「子ざる駅長」が時たま出勤するらしい。和歌山電鉄の「たま駅長」の二番煎じの感はあるが、集客のためにあらゆる工夫を試みているようで、好感が持てる。もっとも、今日は出勤日の予定だったところ、「風邪のため出勤できない」との紙が貼りだされていた。



駅から15分ほど歩いて、目的の五百羅漢のある北栄山羅漢寺にやってきた。もっと山中にあるものと勝手に想像していたのだが、案外小ぶりの平地にあるお寺だった。



境内には、羅漢が所狭しと並べられている。 室町時代後期のものらしいが、作者も、制作の目的も不明なんだそうだ。



お顔、お姿は、一体ずつ異なる。制作者は、戦乱や飢餓が続く厳しい時代にあって亡くなった多くの人々を一人ひとり思い浮かべながら、一心不乱に羅漢を掘り続けた・・・そんなことを勝手に想像してしまう。造りは荒っぽく、技術も未熟なものと感じるが、制作者の強い念が籠っているようだ。



加西市北条町は西国街道の宿場町だったところなんだそうだ。住吉神社や酒見寺などの門前町でもあったらしい。今も商家が立ち並ぶ街道筋の風情が残されている。



加西市内からテクテクと東に歩いて、玉丘史跡公園にやってきた。県内で6番目に大きいと言われる前方後円墳がある。この玉丘古墳に眠るのが、根日女(ねひめ)という女性。後に天皇となる2人の男性から愛され、しかし双方の譲り合いの末、いずれとも結ばれずに亡くなったんだそうだ。



今は、この根日女が加西市のマスコット的存在になっているようだ。神姫バスも「ねっぴ~号」なるものを運行しているようだ。



どういう訳か、玉丘史跡公園の湿地ゾーンには、大きなヤギが住んでいる。なんだか、この公園のヌシのように、周囲から呼びかけるやシャッター音にも、まるで動じることがない。



もともと、北条町から、真東にある加古川線の社駅まで歩くつもりだったが、予定を変更して南に向かう。加西フラワーパークの前を通り過ぎる。昔、来たことがあるような、無いような・・・。



南に向かった目的のひとつは、北条町駅で貰った観光案内に紹介されていた、鶉野飛行場跡。太平洋戦争期に、急ごしらえで建造されたものらしいが、傍には飛行機工場もあり、特攻隊の出撃基地でもあったらしい。今も1200mの滑走路は、整備されないまでも、しっかりと残っている。



付近には、「鶉野飛行場資料館」なるものが、ポツンと建っていたが、なんと月に2回しか開館していないようだ。大変興味深いのに、残念だ。



滑走路には、陸上自衛隊の看板が立っている。演習用の飛行場になっているように書かれているが、滑走路はデコボコのまま放置されているし、セキュリティ設備も見当たらない。もはや使われていないようだ。



予定を変えて南に向かったもう一つの理由は、あのマドンナ駅長に再会するため、法華口駅を訪問すること。和風の駅舎の入り口は、なんだか喫茶店のようだ。実際、駅舎の中はパン屋さんになっていて、待合室はイートインコーナーになっている。どうやらボランティアのマドンナ駅長さんはこのパン屋さんらしい。



ホームに電車が入ってきた。マドンナ駅長さんは、とびっきりの笑顔で電車を迎える。典型的な田舎駅だが、駅舎にもホームにも人が多い。お目当てはこのマドンナ駅長さんのようで、北条鉄道の乗員数は最近大幅に増加しているそうだ。



最後は、ドアでお見送りまでしてくれる。ボランティア駅長どころか、ホントの駅長でも、ここまでしてくれる人はなかなかいない。さらに電車がホームを離れるまで、大きく手を振り続けてくれる。



電車のなかは、カメラを持った中高年が多数。 駅舎や周囲の景色だけではなく、女性運転手さんに向けても、しきりにシャッターが押される。



スタンプラリーは、駅で2つ、施設で2つ(加西観光案内所、五百羅漢)で完成。4つのスタンプで、地元特産品などが賞品となっているプレゼントに応募できる。



本日の歩行軌跡。加西市で14kmほど。厄神駅周辺で歩いた分を加えると15kmほど歩いたことになる。



 それにしても暖かい日だった。20℃近くあったのではなかろうか。上着を脱いでも、ちょっと汗ばむくらいだった。