三峰山(霧氷を求めて)

2018年2月10日(土)



霧氷を求めて、奈良・三重の県境にある三峰山に登る。冬山に登るのは、今を遡ること50年近くも前の小中学校の金剛山以来。気象条件が揃った日に満を持して登りたいものだが、そう都合良くいかない。午後からの降雨も予想されるという悪条件で霧氷に巡り合うチャンスは少なそうだが、今日決行しなければまた来年に持ち越しになってしまう・・・。



近鉄榛原駅から、この季節の土日のみに運行される「霧氷バス」で1時間、登山口がある御杖村の「みつえ青少年旅行村」にやってきた。天候のせいか乗客は意外にも少なく、7割以上が女性。



この日のために購入したアイゼン(チェーンスパイク)を早速装着。ダブルストックも、初登場だ。ありったけの防寒着を着込み、リュックには着替えや飲食料から照明器具や救急治療品などなど、過去の山歩きの反省が蓄積された緊急備品をフル充填。



写真ではなだらかな登り道に見えているのが残念だが、まずまずの坂道が延々と続く。よく見ると、丸太階段に積雪してできた坂道だ。幸いなことにアイゼンは、しっかりと氷結した道に食い込んでくれる。ただ、リュックの重さが結構辛い・・・。



ひとつ目の山小屋を通過。既に結構息切れが激しい。気温は思ったほど寒く無く、上着を脱いではリュックに詰め込んでいく。向こうに見えるのが、三峰山なのかどうかは判らないが、あまり冠雪していないのが気になる。



うんざりするような急斜面。前を行く若いメンバーがリュックに吊り下げているのは、色とりどりのソリのようだ。ソリで遊べるようなところがあるのだろうか。



頂上まで、ようやく半分くらいきたあたりで、右太腿が痙攣する。冷えているせいもあろうが、筋力不足なんだろう。女性ハイカーに負けまいとした無理が祟ったのかもしれない。山歩きでは、ままあることなんだけど、困ったことに座り込むところが無い・・・。騙し騙し歩いていくが、右も左も、太腿の裏も表もおかしくなっていく。



引き返すなら今のうち、どうせ霧氷は見れないよなぁ・・・、なんて思いながら、ようやく見つけた切り株の上に積もった雪も厭わず座り込んで、太腿をカイロで温めながら、麓の集落をぼんやり眺める。



長めの休憩で、太腿の痛みも薄れたので、意を決して再び登り始める。山道にポツンと置かれた石仏に、登山の無事を祈る。



当然のことながら、標高が上がれば上がるほど、雪の深さは増していく。既に大勢の人がこの道を先にすすんでいるのだろうけど、うっかりすると道を見失いそうになるほど、一面の雪景色になってきた。



樹氷ではなくって、杉の枝や幹には雪が付着したもののようだ。なかなかキレイなもんだ。風が吹くと、木が揺れて、突然雪の塊りが落ちてきたりする。



既に標高は1100mを越え、頂上まで、あと少し。おそらく、条件が良ければこの辺りは霧氷の森になるところなんだろう・・・。



驚いたことに木曽御嶽山ビューポイントなんてのがある。調べてみると200kmも離れている。なんと、富士山もここから見えることがあるらしい。



繰り返す太腿の痙攣を誤魔化しながら、ようやく三峰山の山頂に到着。誰が作ったのか、大きな雪だるまが出迎えてくれたが、霧氷の出迎えは無し・・・。



登山者で賑わう山頂だが、曇っていて眺望も楽しめず、ただ冷たい風が吹くだけの広場なので、早々に退却。霧氷は無いが、積雪は50cmくらいはありそうだ。



上ってきた道ではなく、八丁平に向けて下りていく。南に向いた斜面なので、黒い地肌がところどころ見えるんだけど、後で聞くと、ここの霧氷が一番見事なんだそうだ。



狭い雪道のため、前方で何かあると、大渋滞が発生する。



再び杉林。霧氷ではないけれど、雪がキラキラして、とても綺麗だ。何枚も写真を撮ったけど、キラキラ感はうまく再現されていない。



登りの際には、満員御礼だったのでスルーせざるを得なかった三畝峠の下の山小屋に立ち寄る。小屋の中の囲炉裏が、ゴミ捨て場のようになっているのが、とても気になる。燃えるゴミだから、と捨てていっていいものだろうか。



上ってきた登尾ルートではなく、下りは不動滝ルートを選択。覚悟はしていたが、かなりの急坂。へっぴり腰になりながら、歩幅をできる限り短めにして下りていく。こんなところで転んだら、坂をどこまで落ちていくか判ったものではない。



急坂覚悟で、このルートを選んだのは、氷瀑と化している不動の滝を見たかったから。もっとも、滝全体が凍り付いているのではなく、滝の左右が凍っている。



滝壺ギリギリまで近づいての写真撮影を敢行(というほど、危険なところではないけど・・・)。冷気が滝とともに襲い掛かってくる。



凍り付いた滝を観察するため、さらに滝に近寄る。固まっているはずなのに、滝の流れが瞬間に氷結したような動的なものを感じる。動いているようで動いていない。不動滝という名前も、こうしたことから命名されたのかもしれない。(たぶん違うだろうけど・・・)



滝の下流にある橋にできたツララもなかなかのもの。 今日の気温は、間違いなく氷点下を上回っていると思われるけど、まるで溶け出す気配は感じられない。



坂が続く登尾ルートと異なり、不動滝ルートは急坂を下りると、あとは平坦な林道が続く。もっとも、リュックはさらに重くなったように感じる。保温ポットの飲み物は冷たくなってたし、着替えも緊急備品も使わず、食べ物にもほとんど手を付けず終いだ。(帰路のバスでムシャムシャ食べたが・・・) 



登山口となる「みつえ青少年旅行村」に戻ってきた。夏は人気のキャンプ場になるらしい。御杖村のマスコット、つえみちゃんの雪だるまが出迎えてくれる。霧氷まつりも開催中。まあ、基本的には御杖村の物産展+屋台のようなものなんだけど、人口1600人の過疎の村としての精一杯の歓迎を感じる。



三峰山の登頂記念スタンプカードを頂戴する。10回登るとバッジが貰えるそうだが、到底無理だ。霧氷リベンジで再登山したい気持ちもあるが、バスの発車時にいつまでも手を振ってくれた御杖村の人たちには申し訳ないが、雪山はコリゴリという気持ちも強い。



歩行軌跡。地名どころか、山の名前さえ出ない・・・。ただ県境と川だけがあるだけの詰まらない僅か9kmの歩行軌跡図だけど、距離ほどに冬山は甘くない。



標高軌跡。 昨年登った蓬莱山などと比べても、それほどの急な上りではないのだけど、雪のせいか、体調のせいか、あるいは重いリュックのせいか、坂道が辛くかんじられた。



みつえ青少年旅行村に戻った頃には、天気予報通り雨がパラついてきた。この雨が霧になり、霧氷になるそうだ。明日は絶好の霧氷日和だと聞く。残念なこと、このうえない。